去年の発売日から、イヤホンはこのNuForce HEM1というモデルを使っている。
そして、実にどうでもいいことかもしれないが僕は連邦よりもジオン派なため、色は当然赤だ。
このHEM1なのだが、実は少し前から音が途切れたり、ノイズが聞こえるようになってしまった。どうやらジャック付近が断線しているらしく、ケーブルのそのあたりを曲げたり伸ばしたりしてみると、聞こえるようになったりまた途切れたりする。イヤホンを使用する人なら大体誰でも経験したことのある、よくある故障ではないだろうか。
発売当初は12000円位だったのだが、買い替えようと思ってAmazonを覗いてみたら約9000円と、かなり安くなっている。
買い直そうとしていたところ、その様子を見ていたDIY好きな知り合いが
「だたのプラグ付近での断線なら自分でやれば数百円で修理できる」
などと言うのだ。マジかよ・・・でも難しいんでしょ?と思ったが、詳しく話しを聞いてみるとなんだかできそうな気がしてきたので、思い切って自分でやってみる事に。
ちなみに僕には電子工作の経験など、中学生の頃の工作の授業以来皆無だ。当然、電子工作用の工具も一切所持していない。社会人になってから自力で組み立てた最も複雑なものといえば、少し前にふとした思い付きで買ったガンプラだろう。
そんな僕だが、結論からいうと物凄く簡単に、しかもめちゃくちゃ安く修理できたうえに、何だか新しい楽しみに目覚めてしまった感があるので、修理の工程とともに紹介したい。
また、これは実際に修理を終えてから気づいたのだが、これからお伝えする一連の工程はあらゆるイヤホンの断線の修理に応用できると思う。もう二度とイヤホンの断線に怯える必要はなくなると考えると、身につけておいて損は無いはず……!
・舞台は秋葉原
修理する為にはまずパーツが必要だし、僕の場合工具も必要だ。それら全てが即日に、しかも安く揃うのはやなり秋葉。今回向かうべきはオヤイデ電気である。
行き方は簡単で、セガ1号館とマツキヨの間の道を入ったらすぐ左手にある。見ての通り、店舗は小さい。しかし、イヤホンの修理に必要なパーツは何でも揃うというか、ここにある物だけでイヤホンそのものを自作できるレベルだ。
ここではP-3.5GL(穴径4.0mm)というL字プラグを購入した。約700円である。これにした理由は、L字が良いのと、安かったからである。
さて、これで今回必要なパーツは全て揃った。次は道具と場所である。
・工具や場所は200円~
「はんだ付けカフェ」的な店について耳にしたことはあるだろうか?名前の通り、電子工作に必要な道具やらを、スペースと共に定額で貸し出してくれるカフェである。秋葉に存在したものは既に閉店してしまっている様だが、最近は色んな所に似たようなコンセプトの店が存在する。
今回利用するのはその手の店よりももっとシンプルに、道具と場所のみ貸し出してくれる所である。
それがこの「ASSEMBLAGE(アセンブラージュ)」だ。場所はオヤイデ電気よりも駅に近いというか、ほぼ駅の隣である。具体的な位置としては、AKIHABARAゲーマーズの裏とでもいうべき場所である。
中々説明しづらい場所にあるのでまずはこの地図を見て欲しい。
余計ごちゃごちゃして解り難い気もする。とにかく、何だか怪しげな屋台チックな電子パーツ屋の中の1軒と言えばなんとなくわかってもらえると思う。
ここはなんと、基本的な電子工作に必要な一式を、平日なら1時間200円、休日は250円で使い放題なのだ。
営業時間は10時~18時で、あのあたりのパーツ屋で何かを買うと最初の30分は無料になるらしい。
一応行き方を写真で説明すると
カードキングダム横の路地を入って・・・
このインフォメーションセンター横の路地を左に曲がり・・・
このPCNって書いてある紙が目印
中に入ると、誰かしらスタッフっぽい人が居たので利用したい旨を伝えると、紙に利用開始時間をペンで書きこんで渡してくれた。
平日だった為か利用者は僕一人。不慣れなどころか、電子工作なんてほぼ初めてなので人目が無いのはありがたい。
まず何をどう利用したらいいのか聞くと、目に入る全ての道具は全て好きに使っていいとの事。消耗品のはんだやら、電気が通っているかどうかを確認するためのテスター等も全てである。
なんというか「最新のオープンワールドアクションRPGを初めてみたら自由すぎて何をしたらいいかわからない」的な感じで一瞬おろおろとしてしまったが、とりあえず一番奥に陣取って、知り合いから事前に教えて貰ったり、ググったりして仕入れた知識を頼りに作業を開始する事に。
・いざ作業開始ッ!!
ここから先は作業内容を写真と共に説明していく。
まず断線していると思われる部分まで思い切って切る。これはなんだか初めて女の子とベッドインした時並みに緊張した。
切った後は、ケーブルをほぐす。
このように4本あるが、それぞれが右側の+とGND(アースという意味だが、ここでは多分マイナス的に考えておけば問題は無さそう)、左側の+とGNDとなっている。ものによっては+のケーブルは赤、GNDは黒や白といった具合で解りやすくなっているらしいが、HEM1に関してはこの通り全部透明である。その為、どのケーブルが何に該当するのかを調べなければならない。
調べる方法はぶっちゃけ何が正解かよくわからなかったので、とりあえずHEM1を割ってみる事に。もとより失敗したら買い直すつもりではあるが、愛用のイヤホンの本体をカッターでゴリゴリやって二つに割るのは、ドイツのFKKという風俗で初めて複数の外国人の女の子達とベッドインした時並みに緊張した。
どうにか割ってみた所、写真の様に片方が赤で片方が黒っぽいケーブルとなっていた。全く確証は無いが、たぶん赤が+だろう(一般的に+には色付きを、‐には白か黒が使われるらしい)と信じて作業を進める事に。
作業しやすくする為に、本体側のコネクターを固定する
ここでテスター登場。
この「導通チェック」という機能を使う。使い方は20秒位でググった。
このテスターの赤と黒の棒を本体側の端子とほぐした方のケーブルに当てて、どの端子がどこに繋がっているのかを調べ、判明した左右の+にそれぞれ解るようにマジックで印を入れていく。これでほぐした4本のケーブルがそれぞれどちら側の何極なのかが明らかになった。
・はんだ付けの前に
これでいよいよ、先程買ったプラグにはんだ付けしていくわけだが、ここで一つ注意すべきポイントがある。
あのプラグは銀色の部分が外れるようになっていて、ケーブルは内の金色の部分にはんだ付けする。つまり、銀色の部分はカバーなわけだが、それを事前にケーブルに通しておかないと、後で全てやり直す羽目になるのだ。
先にこうしてケーブルに通しておくこと
後はそれぞれ対応している場所にはんだ付けしていけばいい。
はんだ付けの上手いやり方等もよくわからなかったのだが、その場でググって見つけた下の動画を見ながらやった所、それなりに上手く行った。特に、事前にプラグ側にはんだを乗せておくことなどは、この動画で初めて知った。
・いよいよはんだ付け
はんだ付け中は両手がふさがっており、残念ながら写真は無いので、3分クッキング的な感じでいきなり完了済みの写真をどうぞ。
GNDは左右ともまとめてしまって良さそうだったのでそうしたところ、こんな感じではんだ付け。
この辺で、テスト用に持ってきた古いウォークマンにつないでテストしてみる事に。
ここまで何かと確証の無いまま適当に進めてきているが、もしどこかで間違っていたり、はんだ付けが上手く行っていなければきっと聞こえなかったりノイズが入ったりするのだろう。
ぶっちゃけダメ元である。しかし繋いで音楽を再生してみた所、全く問題なくちゃんと聞こえるようになっている。どうやら上手く行ったようだ。
最後は耐久性UPの為に、はんだ付けした部分をこうしてグルーガンで埋め、銀色のケースをかぶせて完成である。
切った元のプラグと並べるとこんな感じ
という事で、ここまでなんと50分位しかかからなかった。初めてにしてはなかなか上出来なのではないだろうか。ASSEMBLAGEの利用料も200円だった。
交通費を除けばここまで合計で約1000円、時間にして1時間程度で直せてしまった。約9000円で新しく買い替えるのと比べると圧倒的に安上がりである。また、今後壊れても自分で修理できる自信がついたのは個人的に大きな収穫だ。あとなんだかんだで愛着が沸いたし、結構楽しかった。
ちなみに、実際に修理したのは今から2カ月前である。というのも、直せたと思ったのは気のせいで、少し使ってみたら間違いが発覚したとあっては、この記事を参考にした人にも迷惑が掛かってしまう。そうならないように、暫く使ってみて問題が無い事を確認してから記事にすることにしたのだ。
修理から今日まで毎日このHEM1を使っており、今も音楽を聴きながらこの記事を書いている。ここまで全く問題は起きていないし、僕に解る範囲では音質の劣化もない。という事で、上述の修理の手順や、各端子の+ーの判断はあっているのだと思う。あるいは、間違っていても実害は無いレベルに収まっているのだろう。
今回こうして直してみる事で、「ぶっちゃけケーブルの自作って簡単じゃん」という事がわかり、1から全部作って好みの色のケーブルに変えてみるのも面白そうだと思ったので、帰る前に再びオヤイデ電気に立ち寄って、自作用にケーブルを購入した事を付け加えておこう。
時間を見つけて丸々1本、ケーブルを自作してみようと思うので、出来上がったらまた記事にしようと思う。